共に歩く

かなり昔の話ですが
飲食店を辞めて全く違う職種のアルバイトしてた時に前の職場で良くしてくれた上司から
「今、何の仕事してるの?俺今⚪︎⚪︎店の店長になったんだけど人不足で、都合が合えばまた、一緒に働きたいんだけど」
と、連絡貰ってアルバイト先に辞める事伝えて2週間後からその上司の店で働きました。
彼の事は前の職場で特別仲が良かった訳でもなく、信用してた訳でもなく
ただ、たんに必要とされたのが嬉しかったからそれに応えただけでした。
彼は会社が赤字で売られていた飲食店を引継ぎ購入しそのまま営業を続けて元からのスタッフから「お前、いつ俺らをクビにするかその機会を待ってるんだろ、お前に従ってたまるか」的な敵だらけの中で赤字を黒字にする為に試行錯誤してました。
もちろん、そんな中に店長の知り合いと私が入れば「俺らの代わりを連れて来やがった」と、私にも敵意は向けられました。

若かった私ですが気にもしませんでした。
なぜなら最初の時点で彼は教えてくれていたから。
それで、なぜわざわざ店長の知り合いだとバラして入店したかと言うと彼は誰の敵でもないんだと元からのスタッフに分からせるためでもありました。

この辺まで書くと元からのスタッフ?
人不足じゃないの?と、思う人も居るかも知れませんね。

人は居るんですよ。
ただ、彼の方針、と言うか新しい会社の方針に従いきれない元からのスタッフが。

だから、私が知らないふりして新しく入店したって何かしらの違和感は元からのスタッフには感じさせてしまうのです。

ならば知り合いだと隠して入店するより、本当の事伝えて入店する方がフェアじゃないですか。

前の職場の本社の方針は分かってたし、彼も新しく変わった方針など包み隠さず教えてくれましたし

新しいスタッフを雇い直して一から教えて物にするのがいかに難しいか、元のスタッフにやり方を少し変えて今まで通り営業する方が如何に会社として得か

クビにする気はないのだと分かって貰って赤字を黒字に一緒に変えて行こうと歩み寄れるチャンスを元からのスタッフに貰いたいだけ

だから元からのスタッフよりキツく注意されたりしたけど後からのフォローも忘れない彼に対して「やっぱ辞〜めた」
と、裏切ることはしませんでした。

そんな状況で私は彼に対する信頼を初めて持つようになります。

それまでは本当に必要とされたし、前の仕事内容と一緒で慣れてるから。
ただそれだけで働いてましたよ。

1カ月も経つとキツく注意を受ける私に同情してか「あいつ、本当嫌な奴だね」と、言ってくるスタッフも出てきました。

私は彼が中途入社でペーペーの頃を知ってます。その時の店の店長は客前でネチネチ注意する人だっので、逆にスタッフルームでしか注意しない彼を褒めました。

だって美味しく食事しに来てるお客様にとって何が一番不愉快かって客の前でスタッフを叱る姿じゃない?
飲食業だけじゃなく接客業で上司が部下を客前で叱ってるの見ると気分悪いもの
前の店舗での店長は平気でそういう事する人で私大嫌いだったもん。
しかもその店長人間だから仕方ないとしてもその日の気分で叱り方に差が激しかったから常に同じトーンで注意してくれる人は珍しいから働き易いけど
それって私だけ⁉︎
と、言えば私より人生経験も社会人経験も長い人は1つや2つ思い当たる節があるもので彼の店長としての見方が変わり始めてお店は良いスパイラルに向いて行きました。

彼は店長で私は下っ端のスタッフ
だけど彼は報連相を私にもしてくれました。

赤字は簡単に解消出来るものではなくそれでも本社からは売上先月比10%アップを容赦なく言ってくるとか

材料費を極力安くする為に本社で一括で大量購入して各店その材料でオリジナルメニュー出せとか、会社は利益出してナンボだから、無茶振りしてきますね。

その上オリジナルメニューの試食に本社から社員が来るとか教えてくれましたし
何か良い案ない?と、相談だってしてきました。

それは途中から私だけではなく元からのスタッフ達にも言える店作りが出来上がってきていました。

あれから10年以上経ちますが上の人間は報連相しっかりしろ
と、必ずと、言っていいほど言いますが下に報連相してくれる人は彼だけで今だに下に報連相してくれる人に出会ってません。

ちなみに彼とは恋愛感情などなく当時お互いきちんと、別に相手は居ましたので勘違いしないでくださいね。

最初は2人でこの店どうにかしないと、と歩いてましたが、店のスタッフみんなで話し合いみんなで力合わせて歩き、いずれ本社に「は?この売上の数字間違ってない」と、驚かせてやりたいね
などと一丸になっていました。

私が入店してから、2年近く経った頃珍しく彼は私にだけこっそり報告してくれました。
「俺、この店今日最後なんだ」
2年近くで赤字を改善した彼の力は本社で評価され、今度は新規開店したけど赤字が続いてる別の店舗に急に移動が決まったというのです。
この店での、今までの最高売上が⚪︎⚪︎万だからその記録塗り替えて去りたい。

彼の願いを私がどうにか出来るわけではありませんでしたが、幸運にも常連のお客様がその日は多く、常連のお客様の席一つ一つ回り「店長が昇進でこの店より大きな新店舗を任される事が決まりまして、もし、良ければ店長を祝って頂けませんか?」と、声掛けして行きました。

常連のお客様は店長が酒呑みである事も知っていたのでビールからスパークリングワインまで各テーブルから店長の為に追加注文を頂けました。

声掛けした私も、ついでにと(私の酒呑みっぷりもバレてたので)色々追加注文頂きまして店が終わってからスタッフみんなで食べなよと盛合せの注文やらまで頂き店長はこの店では二度と更新できないであろう最高売上金額を、叩き出しました。

店が営業終了し最後の片付けの時、彼はこの店で、初の店長業務に苦悩し挫折仕掛けたり色々あったと語りましたが私が一番理解出来なかったと軽く酔いながら話しました。

確かに元から特別仲が良かった訳でもなく信頼関係あったわけではなく、ただ彼の携帯に私の番号が残っていて、来てくれればラッキー位に期待せず電話した相手が、ここまでしてくれると思わなかったと、酔っ払い客の接客業にしてはちょっと時給も安い方だったし最初なんか敵意剥き出しにされるの分かった上で来てくれて最後まで手を尽くしてくれるとは思っても無かった。なんで?

そう改まって言われると確かに…
と、思った。

今の経験でいえば他には居ない上司で楽しく働けるから。
と、言うような答えも出るんだろうけど
その時はまだ社会人経験も浅かったし世の中こんなに報連相しろって言う癖に相談とかしたら面倒そうにする上司とか連絡事項を自分の所で止めておいて理不尽に怒鳴る上司にも、まだ会っていない頃だったので大した事も言えなかったな

しかもホロ酔いで片付け、掃除してたからなんて言ったかもあまり覚えてなくて確か店長に一番に頑張られると下は付いて行かざる得ないよ(笑)
というようなしょうもない事言った覚えが…

共に店を盛り上げようとスタッフに意見を求めるが責任取らせす店長の責任で共に同じ方向を向いて働ける環境は今だにその後10年以上経つが出逢えてない。

俺の言うこと聞け  とか
言われたことだけやってろ  とか

そんな事が一切なく下のスタッフに素直に感謝する事が出来る寛容な彼と共に働いたから彼の頑張りを数字に表したくて一緒に頑張れたのかもしれない。


後日談だが彼の代わりに来た新しい店長は彼と逆で客前で怒鳴るし、王様感覚で俺が白って言えば赤だろうが黒だろうが白なんだよ。という店長来てしまってすぐ辞めました(笑)